「もし〇〇したら、△△する」と決めるだけ!ダイエットの誘惑に勝つ最強の心理学「if-thenプランニング」

「今日こそは間食しないと決めたのに、夕方にはついお菓子に手が伸びてしまった…」
「仕事で疲れたから、今日のジムは休んで明日にしよう…」

ダイエットやトレーニングを始めたものの、このような経験から自己嫌悪に陥り、結局三日坊主で終わってしまったという方は少なくないでしょう。そして、そのたびに「自分はなんて意志が弱いんだ」と自分を責めてしまう。もしあなたがそう感じているなら、まず知ってほしいことがあります。ダイエットがうまくいかないのは、あなたの意志が弱いからではありません。それは、人間の脳の仕組みと、誘惑に打ち勝つための「戦略」を知らないだけなのです。

この記事では、ニューヨーク大学の心理学者ピーター・ゴルヴィッツァー教授が提唱し、数々の研究でその絶大な効果が証明されている「if-thenプランニング(イフゼンプランニング)」という心理学テクニックをご紹介します。

これは、「もし〇〇という状況になったら、△△という行動をとる」とあらかじめ決めておくだけの、驚くほどシンプルな方法です。しかし、その効果は絶大で、目標達成率を2倍から3倍に高めることが研究で示されています。

この記事を最後まで読めば、あなたは意志力や根性論に頼ることなく、まるで自動操縦のようにダイエットの誘惑を乗りこなし、理想の体への道を着実に歩むための「技術」を身につけることができるでしょう。

目次

  1. なぜあなたのダイエットは失敗するのか?意志力の罠
  2. ダイエット成功の鍵は「習慣化」にあり
  3. 最強の習慣化ツール「if-thenプランニング」とは?
  4. 実践編:if-thenプランニングの作り方と具体例
  5. if-thenプランニングを成功させるための3つのコツ
  6. パーソナルトレーニングとif-thenプランニングの相乗効果
  7. まとめ:意志力に頼らないダイエットを始めよう

1. なぜあなたのダイエットは失敗するのか?意志力の罠

多くの人がダイエットの失敗を「意志の弱さ」のせいにしますが、これは大きな誤解です。そもそも、人間の意志力には限界があります。

社会心理学者のロイ・バウマイスター博士の研究によれば、意志力は筋肉に似ており、使えば使うほど疲弊してしまう「有限な資源」であるとされています。これを「自我消耗(Ego Depletion)」と呼びます。

例えば、朝から仕事で重要な決断をいくつも下し、上司や顧客とのやり取りで気を使い、満員電車に耐えて帰宅したとします。この時点で、あなたの意志力はすっかり消耗しきっています。そんな状態で目の前に美味しそうなケーキやお酒があれば、それに抗うための意志力はほとんど残っていません。「今日は頑張ったからいいか」と誘惑に負けてしまうのは、人間としてごく自然な反応なのです。

つまり、ダイエットがうまくいかないのは、あなたが疲れている時に、脳が楽な方、つまり短期的な快楽(食べる、休むなど)を選びやすいからです。脳はエネルギー消費を抑えようとする性質があるため、複雑な判断や我慢が必要な行動を避け、いつも通りの楽な行動パターンを選択しようとします。

「気合で乗り切れ」「根性で我慢しろ」といった精神論が通用しないのは、この脳の仕組みに逆らっているからです。意志力という限られた資源だけに頼ったダイエットは、いずれ必ず破綻します。成功するためには、意志力に頼らない「仕組み」を作ることが不可欠なのです。

2. ダイエット成功の鍵は「習慣化」にあり

では、意志力に頼らない「仕組み」とは何でしょうか。その答えが「習慣化」です。

歯磨きを例に考えてみましょう。あなたは毎朝、「よし、今日は歯を磨くぞ!」と強い意志を持って洗面台に向かいますか?おそらく、ほとんどの人が無意識のうちに、朝食後や起床後に歯を磨いているはずです。これは、歯磨きという行動が完全に習慣化され、脳がエネルギーを使わずに自動的に実行できるレベルにまで落とし込まれているからです。

ダイエットも同じです。健康的な食事を選ぶこと、定期的に体を動かすこと、十分な睡眠をとること。これらの行動を、歯磨きのように「当たり前」の習慣にしてしまえば、いちいち意志力を使う必要がなくなります。

習慣化された行動は、脳の「大脳基底核」という部分が司っており、意識的な判断を下す「前頭前野」のエネルギーを節約してくれます。つまり、良い行動を習慣化できれば、疲れていても、気分が乗らなくても、自然と体に良い選択ができるようになるのです。

リバウンドを繰り返す人の多くは、短期間だけ強い意志で頑張り、目標達成後に元の生活に戻ってしまいます。一方で、理想の体型を維持している人は、体に良い生活そのものが「習慣」になっています。

私たちパーソナルトレーナーの仕事は、単にトレーニングや食事の方法を教えるだけではありません。お客様一人ひとりの生活に寄り添い、健康的な行動が無理なく続く「習慣」となるまで、伴走しサポートすることにあります。その習慣化を強力に後押ししてくれるのが、次にご紹介するif-thenプランニングなのです。

3. 最強の習慣化ツール「if-thenプランニング」とは?

if-thenプランニングは、その名の通り、「If(もし)~, then(そのとき)~」という形式で行動計画を立てるテクニックです。具体的には、「もしXという状況が起きたら、Yという行動をとる」というルールを、あらかじめ具体的に設定しておきます。

例えば、
「もし、仕事帰りにコンビニに寄ったら、そのときは、お菓子コーナーには行かず、サラダチキンとヨーグルトを買う」
「もし、夕食後になにか食べたくなったら、そのときは、歯を磨いてハーブティーを飲む」

このように決めておくだけです。シンプルすぎて、本当に効果があるのか疑問に思うかもしれません。しかし、このシンプルなルールが、私たちの脳に驚くべき効果をもたらします。

その理由は、脳が「Xという状況」を認識すると、それに紐づけられた「Yという行動」を自動的に思い出し、実行しやすくなるからです。事前にルールを決めておくことで、いざ誘惑の場面に直面したときに、「どうしようかな…」「食べてもいいかな…」と迷うプロセスをスキップできます。意志力を使って悩む前に、脳が自動的に「Yをすべきだ」と判断してくれるのです。これにより、意志力の消耗を最小限に抑え、正しい行動を選択できる確率が劇的に高まります。

提唱者であるゴルヴィッツァー教授らが行った数々の研究では、このif-thenプランニングを用いたグループは、用いなかったグループに比べて、運動習慣の継続率や健康的な食生活の達成率が2倍から3倍も高かったという結果が報告されています。これは、ダイエットや健康増進の分野において、驚異的な効果と言えるでしょう。

if-thenプランニングは、面倒な状況に直面したときの判断を脳に「事前予約」しておくようなものです。この予約があるおかげで、私たちは日々の小さな誘惑との戦いから解放され、より重要なことにエネルギーを使えるようになるのです。

4. 実践編:if-thenプランニングの作り方と具体例

それでは、実際にあなたのダイエットにif-thenプランニングを取り入れてみましょう。作り方はとても簡単です。

ステップ1:目標を明確にする
まずは、あなたの目標を具体的にしましょう。「痩せたい」ではなく、「3ヶ月で体重を5kg減らし、体脂肪率を3%下げる」のように、具体的で測定可能な目標を設定します。

ステップ2:目標達成を阻む「障害」や「誘惑」を洗い出す
次に、その目標達成を妨げる可能性のある、具体的な状況や誘惑をできるだけ多く書き出してみましょう。これは非常に重要なステップです。

例:
・仕事のストレスで、夜にお酒とスナック菓子を食べてしまう
・飲み会に誘われると断れず、つい食べ過ぎてしまう
・朝、起きるのが辛くて運動をサボってしまう
・エレベーターが楽なので、階段を使わない

ステップ3:「もし~(障害)が起きたら、~(代替行動)する」というルールを作る
洗い出した障害や誘惑それぞれに対して、「if-then」の形で具体的な対策行動を決めます。これがあなたの行動計画になります。

以下に、様々なシチュエーションに応じた具体例を挙げます。ぜひ参考に、あなた自身のルールを作ってみてください。

食事の誘惑編
・もし、夕食後に口寂しくなったら、そのときは、すぐに歯を磨き、無糖の炭酸水を飲む。
・もし、職場のデスクにお菓子が置いてあったら、そのときは、「ありがとうございます」と言って受け取るが、その場では食べずに引き出しにしまい、後で家族にあげる。
・もし、飲み会に誘われたら、そのときは、最初の一杯はビールでも、二杯目からはハイボールかウーロンハイにする。
・もし、揚げ物が食べたくなったら、そのときは、オーブンで焼いた鶏肉や魚を食べる。
・もし、友人とのランチでメニューに迷ったら、そのときは、定食メニュー(ご飯、汁物、主菜、副菜が揃っているもの)を選ぶ。

  • もし、コンビニで甘いものが欲しくなったら、そのときは、スイーツコーナーではなく、ヨーグルトやプロテインバーのコーナーに行く。

運動のサボり心編
・もし、朝起きて「ジムに行くのが面倒だ」と感じたら、そのときは、何も考えずにトレーニングウェアに着替える。
・もし、仕事で疲れてトレーニングを休もうか迷ったら、そのときは、「10分だけストレッチする」と決めてマットを敷く。
・もし、雨が降っていてランニングに行けないなら、そのときは、家でスクワットとプランクを3セット行う。
・もし、エレベーターを使おうとしたら、そのときは、一つ下の階で降りて階段を使う。
・もし、金曜の夜に疲れていたら、そのときは、土曜の朝にトレーニングの予定を入れる。

生活習慣編
・もし、寝る前にスマートフォンを触りたくなったら、そのときは、代わりに本を10ページ読む。
・もし、日中に喉が渇いたら、そのときは、ジュースではなく、水を飲む。
・もし、週末の朝に二度寝しそうになったら、そのときは、カーテンを開けて太陽の光を浴びる。
・もし、食事を早食いしていることに気づいたら、そのときは、一度箸を置き、3回深呼吸してから再び食べ始める。

これらの例のように、具体的であればあるほど、脳は行動に移しやすくなります。

5. if-thenプランニングを成功させるための3つのコツ

この強力なツールをさらに効果的に活用するために、いくつかのコツがあります。

コツ1:具体的で実行可能なルールにする
「もし太りそうなものを食べたくなったら、健康的なものを食べる」というルールは、漠然としすぎていて効果が薄いです。どのくらい具体的であるべきかというと、「5歳の子供でも理解して実行できるレベル」を目指しましょう。
「もしポテトチップスが食べたくなったら、代わりに素焼きのナッツを手のひらに乗る分だけ食べる」のように、状況と行動をできるだけ詳細に設定することが成功の鍵です。

コツ2:ポジティブな代替行動を設定する
「もしお菓子を食べたくなったら、我慢する」のような、行動を「禁止」するルールは、かえってその行動への欲求を高めてしまうことがあります。
そうではなく、「もしお菓子を食べたくなったら、フルーツを食べる」「もしソファでゴロゴロしたくなったら、5分だけ散歩に行く」のように、何か別のポジティブな行動に「置き換える」ルールを設定しましょう。これにより、我慢しているという感覚が減り、前向きな気持ちで続けやすくなります。

コツ3:最初は1〜3個の小さなルールから始める
最初からたくさんのルールを作ると、それを覚えるだけで疲れてしまい、結局どれも実行できないという事態に陥りがちです。まずは、あなたが最も乗り越えたいと感じる障害を1つか2つ選び、それに対するif-thenプランだけを実践してみましょう。
小さなルールを確実に守れるようになると、それが成功体験となり、自信につながります。一つの習慣が身についたら、また新しいルールを追加していく。このように、焦らず段階的に進めることが、長期的な成功につながります。

もし、決めたルールを守れなかったとしても、自分を責める必要は全くありません。「なぜ守れなかったのか?」を冷静に分析し、「ルールが具体的でなかったかな?」「代替行動のハードルが高すぎたかな?」と、ルール自体を見直すチャンスだと捉えましょう。if-thenプランニングは、試行錯誤しながら自分に合った形に育てていくものなのです。

6. パーソナルトレーニングとif-thenプランニングの相乗効果

if-thenプランニングは一人でも実践できますが、パーソナルトレーナーと一緒に取り組むことで、その効果を何倍にも高めることができます。

まず、あなた自身では気づけない「目標達成を阻む本当の障害」を、プロの視点から一緒に見つけ出すことができます。何気ない会話や食事の記録から、「ストレスを感じると甘いものに走る傾向がありますね」「週末の夜更かしが、週明けのトレーニングの質に影響していそうです」といった、客観的なフィードバックを得られるのです。

次に、その障害に対する「効果的な代替行動」を、あなたのライフスタイルや好みに合わせて提案することができます。例えば、「甘いものがやめられない」という悩みに対して、ただ我慢させるのではなく、「このプロテインスイーツなら罪悪感なく食べられますよ」「この時間帯にこの栄養素を摂っておくと、甘いものへの渇望が減ります」といった、専門知識に基づいた具体的な選択肢を提示できます。

さらに、パーソナルジムは、作ったプランを実行し、報告する「場」としての役割も果たします。「先週決めた『もし飲み会があったら、締めのラーメンは食べずに帰る』というルール、守れました!」と報告することで、トレーナーから承認や賞賛が得られ、それが次のモチベーションにつながります。これを心理学で「公的なコミットメント」と呼び、目標達成率を高める効果があります。

一人では挫折しがちな習慣化のプロセスを、専門家が二人三脚でサポートする。これこそが、パーソナルトレーニングが多くの人の人生を変えることができる理由の一つです。if-thenプランニングという強力な「地図」と、パーソナルトレーナーという信頼できる「ガイド」がいれば、あなたはもう道に迷うことはありません。

7. まとめ:意志力に頼らないダイエットを始めよう

ダイエットの失敗は、あなたの意志の弱さが原因ではありません。それは、人間の脳の仕組みに逆らった、根性論に頼りすぎた戦略のせいでした。

今回ご紹介したif-thenプランニングは、「もし~したら、~する」と事前に決めておくだけで、意志力の消耗を防ぎ、健康的な行動を自動化してくれる、科学的に証明された強力なツールです。

まずは、あなたのダイエットを邪魔する最大の誘惑を一つだけ見つけ、それに対するif-thenプランを立ててみてください。その小さな一歩が、あなたのダイエットを「我慢と苦痛の連続」から、「賢い仕組みで乗りこなすゲーム」へと変えてくれるはずです。

もし、自分一人で障害を見つけたり、効果的なルールを立てたりするのが難しいと感じたら、いつでも私たちプロにご相談ください。あなたの生活、性格、目標に合わせた、あなただけのif-thenプランを一緒に作り、理想の体への道のりを全力でサポートします。

投稿者プロフィール

yuki hayakawa
yuki hayakawa
MMTパーソナルジム静岡代表

【所有資格】
・メンタルトレーニングスペシャリスト
・心理カウンセリングスペシャリスト
・スポーツフードスペシャリスト
・マインドフルネスコンサルタント
・メンタルヘルススペシャリスト
・ファスティングスペシャリスト

【経歴】
・トレーナー歴24年
・2023ベストボディ静岡大会モデル部門ファイナリスト
・2024年ベストボディ静岡大会モデル部門6位

【詳細】
・スポーツクラブでのインストラクター歴14年
フィットネス部門のトップとして活動。ダイエット指導やボディメイク以外にも生活習慣病予防プログラム、介護予防指導、スタジオプログラム、スイミング指導の経験も豊富。

・パーソナルジムでの代表トレーナー歴10年
クライアントには弁護士、医師、歯科医師、看護師、税理士、企業の代表取締役など多数おり、50代マラソン全国ランキング3位の方の指導も行っている。

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